
「姿勢には気をつけてるんですけどねぇ……」
背中が痛い方とお話ししていると、結構よく聞く言葉です。
猫背にならないように、胸を張る。
肩を後ろに引く。
顎を引く。
お腹にも少し力を入れる。
仕事中も、
「あ、姿勢悪くなってる」
と思ったら、ピシッと座り直す。
かなり頑張っている。
なのに夕方になると、背中がズーン。
肩甲骨の間も重い。
腰の少し上まで張ってくる。
「姿勢を良くしているのに、なんで背中が痛くなるんですか?」
これ、不思議ですよね。
でもですね。
もしかすると、姿勢を良くしようと頑張っていること自体が、背中を疲れさせているのかもしれません。
ということで今回は、
「良い姿勢と背中の痛み」
についてです。
「良い姿勢」にしているのに、こんなことありませんか?
まず、こんな感じじゃないでしょうか?
- パソコン中は猫背にならないように胸を張っている
- 肩甲骨を後ろに寄せるようにしている
- 背筋を伸ばして座るようにしている
- 姿勢を正すと最初は気持ちいい
- でもしばらくすると背中が疲れてくる
- 夕方になると肩甲骨の間が張る
- 腰と背中の境目が重くなる
- 背中を反らすと「効いてる感じ」がする
- 気を抜くとすぐ猫背に戻る
- 「体幹が弱いから」と言われたことがある
こんな感じです。
で、よく言われるのが、
「もっと姿勢を意識しましょう」
です。
もちろん、姿勢を意識すること自体が悪いわけではありません。
でも、ここでちょっと考えてみてください。
良い姿勢って、ずっと力を入れて作っておくものなんでしょうか?
「良い姿勢」を一回作ってみてください
椅子に座って、姿勢を良くしてみましょう。
胸を張る。
肩を後ろに引く。
顎を軽く引く。
お腹にも少し力を入れる。
はい。
いい感じです。
では、このまま30分。
……。
1時間。
……。
どうでしょう?
たぶん、しんどいと思います(笑)。
なぜなら、これは姿勢というより、
一つの形を筋肉で維持している状態だからです。
背筋を伸ばすほど、背中の筋肉は頑張ります
姿勢を正そうとすると、背骨を起こす筋肉が働きます。
もちろん、立ったり座ったりしている以上、背中の筋肉はある程度働いています。
でも、
「絶対に猫背になっちゃダメ」
と思って、ずっと胸を張っている。
ずっと背筋を伸ばしている。
となると、背中側の筋肉は、何時間もずっと働きっぱなしになりやすいんです。
筋肉って、力を出すことも必要ですが、力を抜くことも必要です。
一日中ずっと、
「はい、背筋伸ばして!」
と言われていたら、そりゃ疲れますよね。
ここで今回見てほしいのが「胸郭と骨盤」
今回のポイントは、肩甲骨でも、首でも、寝返りでもありません。
見てほしいのは、胸郭と骨盤の位置関係です。
胸郭というのは、胸椎、肋骨、胸骨などで作られる、胸のかごのような部分です。
その下には、骨盤があります。
ざっくり考えると、身体には、上に胸郭、下に骨盤、という二つの大きな塊があるわけです。
この二つの位置関係が、姿勢を考えるときに結構大切なんです。
肩甲骨の内側に痛みが集中する場合は、
首・胸椎・肋骨・呼吸との関係も考える必要があります。
胸郭が骨盤より前に出ていませんか?
よくあるのが、
「姿勢を良くしよう!」
として、胸をグッと前へ出している姿勢です。
胸を張る。
すると、胸郭が前に移動します。
でも、そのままでは身体が前へ倒れてしまいます。
そこで、腰や背中を反って、身体を後ろへ引き戻します。
見た目は、「背筋の伸びた良い姿勢」です。
でも身体の中では、胸郭を前へ出して、背中と腰の筋肉で後ろへ引き戻している。
これを何時間も続ける。
となると、背中はかなり頑張ります。
「猫背の反対=良い姿勢」ではありません
猫背が悪い。
だから、反対に反ればいい。
と思っている方も結構います。
でも、身体ってそんなに単純ではありません。
猫背が、丸まりすぎた姿勢だとしたら、反対に、胸を張りすぎて反りすぎる姿勢も、身体にとっては負担になることがあります。
つまり、悪い姿勢の反対側まで行けば、良い姿勢になるわけではないということです。
これ、結構大事です。
朝起きたときに背中が特につらい方は、
**「朝起きると背中が痛い理由」**もあわせてご覧ください。

胸郭を「骨盤の上に置く」
私は姿勢を見るとき、
「胸を張ってください」
というより、胸郭が骨盤の上にどう乗っているかを見ます。
身体を横から見たとき、胸郭が骨盤より大きく前へ出ている。
あるいは、逆に後ろへ引きすぎている。
そうすると、身体は倒れないように、どこかの筋肉を使って調整します。
背中かもしれない。
腰かもしれない。
首かもしれない。
つまり、背中が痛いからといって、必ずしも背中そのものが悪いとは限らないんです。
身体全体の位置を保つために、背中が頑張っていることもあります。
ちょっと立ってやってみてください
一度、普通に立ってみてください。
まず、胸を思いっきり張ります。
胸骨を前へ出す感じ。
どうですか?
腰が少し反りませんか?
背中にも力が入りませんか?
次に、一度全部力を抜いてください。
そして今度は、胸を前へ出すのではなく、胸郭を骨盤の真上にそっと乗せるような感じにします。
お腹をガチガチに固める必要はありません。
胸も張らなくて大丈夫です。
どうでしょう?
最初の姿勢より、少し楽ではありませんか?
もちろん、これだけで姿勢を判断できるわけではありません。
でも、「良い姿勢=胸を張る」ではないということは、なんとなく感じてもらえると思います。
なぜ「胸を張る」と背中が痛くなることがあるの?
ここで、もう少し身体の話をしてみましょう。
身体は、常に重力を受けています。
その中で、頭や胸郭を支えています。
胸郭が骨盤の上から前へずれると、そのままでは身体が前に倒れます。
そこで、背中側の筋肉が働いて、
身体を後ろへ引き戻します。
いわば、身体が倒れないように、背中でブレーキをかけているような感じです。
その状態が、5分なら問題ないかもしれません。
でも、パソコン仕事で何時間も。
となると、背中はずっとブレーキをかけっぱなし。
そりゃ、夕方には、
「背中しんどい……」
となります。
今回は「動き」よりも「支え方」の話です
これまで、肩甲骨や首、寝返りなどの記事を書いてきました。
そこでは、
「動けるかどうか」
という話をしました。
でも今回ちょっと違うのは、身体をどう支えているかです。
身体は、動くだけではありません。
座っているときも、立っているときも、重力の中で身体を支えています。
その支え方が、一部の筋肉に偏ってしまう。
すると、そこに疲労が集まります。
背中痛の中には、こうした、「姿勢の形」より「姿勢をどう維持しているか」が関係している場合もあるんです。
オステオパシーでは姿勢の形だけをみません
施術でも、
「私、猫背なんです」
とか、
「姿勢が悪いんですよね」
と言われることがあります。
で、立ってもらいます。
確かに、少し丸まって見える。
でも、それだけでは判断しません。
胸郭はどこにある?
骨盤との位置関係は?
体重は右と左、どちらに乗っている?
足はどう使っている?
座ったときは?
歩いたらどうなる?
姿勢を良くしようとしたとき、どこに力が入る?
いろいろ見ます。
なぜか?
見た目がきれいでも、身体がしんどい姿勢はあるからです。
「先生、姿勢を良くすると背中が痛いんです」
実際に、こういう方もいます。
「猫背にならないように気をつけてるんですが、姿勢を良くすると逆に背中が痛いんです」
そこで、普段作っている「良い姿勢」をやってもらう。
すると、胸をグーッと前へ出して、腰を反って、肩甲骨を後ろへ寄せている。
本人としては、「めちゃくちゃ良い姿勢」です。
でも身体は、ガチガチ。
で、少し胸の位置を変えて、骨盤の上に乗るようにしてもらう。
肩の力を抜く。
すると、
「あれ?こっちの方が楽ですね」
となることがあります。
これ、どちらが「見た目として正しいか」より、
私は、どちらが身体に余計な力を使わせていないか、を見る方が大切だと思っています。
姿勢は「写真」ではなく「動画」
これも今回、ぜひ覚えておいてほしいところです。
姿勢というと、横から写真を撮って、頭はここ。
肩はここ。
骨盤はここ。
とチェックするイメージがあります。
もちろん、それも一つの見方です。
でも人間って、一日中止まっていません。
立つ。
座る。
歩く。
振り向く。
物を取る。
しゃがむ。
また立つ。
つまり、姿勢は、一枚の写真ではなく、ずっと続いている動画なんです。
なので、完璧な一枚を作ろうとして、その形で固まってしまう。
これは、ちょっと違うんじゃないかなと思います。
「良い姿勢」より「楽に戻れる姿勢」
では、どんな姿勢がいいのでしょう?
私は、ずっと同じ形を維持できる姿勢より、力を入れなくても、楽な位置に戻ってこられる姿勢の方が大切だと考えています。
少し前に動く。
戻る。
少し横に傾く。
戻る。
振り向く。
また戻る。
そのたびに、背中の筋肉をギューッと固めなくてもいい。そんな身体です。
良い姿勢って、「止まれる身体」ではなく、「戻れる身体」なんじゃないかなと思っています。
ちょっと自分の姿勢をチェックしてみましょう
次の中で、思い当たるものはありますか?
- 猫背にならないよう、いつも胸を張っている
- 姿勢を良くすると腰が反る
- 背筋を伸ばすと背中に力が入る
- 肩甲骨をずっと寄せている
- 午前中は平気だけど夕方になると背中が痛い
- 立っているだけでも背中が疲れる
- 「力を抜いて」と言われてもよくわからない
- 姿勢を正すと呼吸しにくい感じがする
- 気を抜くと一気に丸くなる
- 良い姿勢を維持するのがしんどい
もちろん、いくつ当てはまったから、何かが悪いという話ではありません。
ただ、いくつか思い当たるなら、姿勢の形だけでなく、胸郭と骨盤の位置関係や、どこに力を入れて支えているかを見直してみてもいいかもしれません。
今日からやってほしいことは3つだけ
今回も、やることは3つだけです。
1.「胸を張る」を一旦やめてみる
背中が疲れたとき、さらに背筋を伸ばす。
胸を張る。
これを一旦やめてみましょう。
まず、ふーっと息を吐いて、肩の力を抜く。
胸も少し力を抜く。
それだけでOKです。
姿勢を直す前に、余計な力を抜く。
まずはここからです。
2.胸郭を「前へ出す」ではなく「骨盤の上へ」
椅子に座って、胸を張るのではなく、身体を少し前後に揺らしてみてください。
前へ。
後ろへ。
その中で、背中やお腹にあまり力を入れなくても座れる位置を探します。
イメージとしては、胸郭が骨盤の上にふわっと乗る場所。
ピシッとする必要はありません。
「ここ、ちょっと楽かも」
くらいで十分です。
3.姿勢を崩してもいい
これ、意外と大事です。
仕事中、ずっと良い姿勢でいようとしない。
少し前へ行ってもいい。
少し後ろにもたれてもいい。
右に体重を移してもいい。
そしてまた戻る。
姿勢は崩してはいけないものではありません。
同じ形に固まり続けないことの方が大切です。
ただし、背中の痛みを全部「姿勢のせい」にしないでください
ここは大事です。
背中が痛い。
姿勢が悪いからだろう。
あるいは、姿勢を良くしすぎたからだろう。
と決めつけないでください。
背中の痛みには、医療機関での確認が必要なものもあります。
特に、
- 突然、これまでにない強い背中の痛みが出た
- 胸の痛みや強い息苦しさがある
- 発熱や悪寒を伴う
- 転倒や事故のあとから痛い
- 腕や脚のしびれ、筋力低下が進んでいる
- 痛みがどんどん悪化している
- 夜間も強く痛み、楽になる姿勢がない
- 原因のわからない体重減少など、ほかの体調変化がある
こんな場合は、
「姿勢かな?」
で様子を見続けず、まず医療機関で相談してください。
病院では大きな異常なし。でも姿勢を正すほど背中がつらい
一方で、検査では大きな異常はない。
姿勢にも気をつけている。
ストレッチもしている。
筋トレもしている。
でも、夕方になると背中が痛い。
姿勢を良くしようとすると、逆につらい。
そんな場合、
「もっと姿勢を良くしよう」
ではなく、少し違う視点から身体を見てみてもいいと思います。
胸郭。
骨盤。
背中。
そして、その身体をどう支えているのか。
姿勢の問題は、必ずしも、「形が悪い」こととは限りません。
その形を作るために、どこが頑張りすぎているか。
そこを見ると、また違うものが見えてくるかもしれません。
最後に
また仕事中、背中がズーンと重くなって、
「あ、姿勢悪い!」
と思ったら。
すぐに胸を張る前に、ちょっとだけ思い出してください。
「ほんまに、もっと頑張って姿勢を良くした方がいいんかな?」
と。
一度、ふーっと息を吐く。
肩の力を抜く。
胸を前へ突き出すのではなく、骨盤の上にそっと戻してみる。
それで少し楽になるなら、背中が求めていたのは、
「もっと頑張れ」
ではなく、
「もうちょっと力抜いてええで」
だったのかもしれません。
姿勢を良くしているのに背中が痛い。
そんなとき、姿勢の形だけを追いかけるのではなく、身体がその姿勢をどうやって作っているのかを見てみる。
私は、そこを大切にしています。
身体をみながら、
「なんで、この背中ばっかり頑張ってるんやろ?」
を探していく。
それが、オステオパシーで姿勢をみる面白さでもあります。
神戸元町で姿勢と背中の痛みにお悩みの方へ
背中の痛みについて、当院の施術方針や確認するポイントを詳しくまとめた
「背中・肩甲骨周りの痛み」ページはこちらです。
神戸元町整骨院KUでは、背中が痛い場合でも、単純に、
「猫背だから姿勢を正しましょう」
とは考えません。
胸郭と骨盤の位置関係、身体の支え方、首や肩、背中の動き、左右の体重のかかり方など、身体全体を確認します。
「姿勢には気をつけているのに背中が痛い」
「胸を張ると逆につらい」
「夕方になると背中がパンパンになる」
「良い姿勢を維持するのがしんどい」
「病院では大きな異常はないと言われたけれど、背中の痛みが続いている」
そんな場合は、一度ご相談ください。
「姿勢が悪い」という結果だけではなく、「その姿勢を身体がどうやって支えているのか」。
オステオパシーの考え方をもとに、身体全体を丁寧にみていきます。
※強い痛み、進行するしびれや筋力低下、発熱、胸痛、呼吸困難などを伴う場合や、症状が悪化している場合は、施術よりも医療機関での診察を優先してください。



