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オステオパシーは首こりに効果がある?海外の研究論文をオステオパスが読み解く

「先生、オステオパシーって首こりにも効果あるんですか?」

そう聞かれることがあります。

そりゃ、施術する側からすれば、

「ありますよ!」

と言いたくなるところです(笑)。

実際、私自身も長年、首こりの方の身体をみてきました。

首だけではなく、肩甲骨や胸郭。

腕の使い方。

身体全体のバランス。

いろいろ確認して施術しています。

でもですね。

ここで一つ問題があります。

「それって先生の感想ですよね?」問題。

はい。

その通りです。

私が、

「臨床ではこう感じています」

と言うことと、

「研究でも同じことが確認されています」

ということは、まったく別の話です。

なので今回は、少し真面目に、オステオパシーは慢性的な首の痛み・首こりに対して、研究ではどこまでわかっているのか? それについての海外の論文を見てみましょう。

先に結論を言っておくと、良い結果を示した研究はあります。

でも、「オステオパシーは首こりに効くことが科学的に証明された!」とドヤ顔で言えるところまでは、まだ来ていません。

このあたり、なるべく正直にお話しします。


目次

そもそも「首こり」と研究でいう「neck pain」は少し違います

まずここ。

日本では、「首こり」という言葉を普通に使います。

首が重い。

張っている。

動かしにくい。

いつもガチガチ。

そんな感じです。

一方、海外の研究では主に、chronic neck pain、あるいは、chronic non-specific neck pain、という言葉が使われます。

日本語にすると、慢性頸部痛慢性非特異的頸部痛、くらいの感じです。

つまり、これから紹介する研究が対象にしているのは、必ずしも日本人が言う「首こり」と完全に同じではありません。

この違いは、最初に頭に置いておいてください。


エビデンス:オステオパシーと慢性首痛に関する論文

さて、ここからちょっと真面目な話です。

今回は、なるべくエビデンスレベルの高い研究から見てみます。


① 2024年 システマティックレビュー+メタ解析

まず、一番新しくて、一番厳しい研究からいきましょう。

2024年に、「オステオパシーは首痛・腰痛に対して、偽治療やプラセボより優れているのか?」を調べたシステマティックレビューとメタ解析が発表されています。

9つの研究が質的評価に含まれ、メタ解析では、疼痛について7研究・1,173名、機能障害について6研究・1,153名が解析されました。

結果はどうだったか?

OMTはsham(偽治療)やplaceboより、痛みや機能障害を有意に改善したとはいえなかった。

これが結論です。

エビデンスの確実性も、中等度〜非常に低い、と評価されています。

つまりどういうことか?

いきなり、オステオパシーにとって都合の悪そうな論文から紹介しました(笑)。

でも、ここは大切です。

「オステオパシーを受けた人が良くなった研究がある」ということと、「オステオパシー特有の効果が、偽治療より明確に優れている」ということは、同じではありません。

現在の質の高い研究をまとめると、少なくとも、「偽治療より明らかに優れている」とまでは確認されていない。

これが現状です。


② 97名を対象にしたランダム化比較試験

では、個々の研究を見るとどうでしょう?

2022年に発表された研究では、21〜65歳の慢性非特異的頸部痛の患者97名を対象に、OMT(オステオパシー・マニュピュレーティブ・トリートメント)を受ける期間と、待機する期間を比較しています。

OMTは、4〜6週間の間に3〜4回。

結果として、OMTを受けた期間では、平均的な痛み、現在の痛み、Neck Disability Index(首の痛みによる生活上の障害)が、待機期間より有意に改善しました。

平均疼痛の群間差は約1ポイント、NDIは約5.3%改善しています。

研究に関連した重篤な有害事象も報告されませんでした。

つまりどういうことか?

これは、

オステオパシーにとっては、

かなり前向きな研究です。

少なくとも、

慢性的な首の痛みを持つ人の一部では、

数週間のOMTによって痛みや生活上の不自由さが改善する可能性がある。

そう考える材料にはなります。

ただし、比較対象が「何もしない待機期間」です。

先ほどの、偽治療と比べて本当に違うのか?

という問題とは、少し意味が違います。

ここ、結構大切です。


③ 2008年の慢性非特異的頸部痛RCT

もう一つ。

2008年には、慢性非特異的頸部痛の患者41名を対象にしたランダム化比較試験があります。

この研究では、両群とも偽の超音波治療を受け、一方のグループだけが、それに加えて個々の身体所見に応じたオステオパシー治療を受けました。

平均疼痛は、オステオパシー群で、4.7 → 2.2、対照群では、4.8 → 4.0、となり、群間差も統計学的に有意でした。

つまりどういうことか?

この研究を見ると、患者さんごとに身体を評価し、その結果に応じて施術内容を変える

という、実際のオステオパシーに比較的近い方法でも、慢性的な首の痛みに変化がみられています。

これは、私たちオステオパスとしては興味深いところです。

ただし、対象は41名。

かなり小規模です。

著者自身も、「この結果が再現できるか」、「長期的な効果があるか」について、さらなる研究が必要だとしています。


④ 「運動+オステオパシー」はどうだった?

これも面白い研究です。

2020年、慢性非特異的頸部痛の90名を、運動だけを行うグループと、運動+OMT(オステオパシー・マニュピュレーティブ・トリートメント)を行うグループに分けました。

4週間後、OMT+運動群では、運動だけの群より、痛みとNeck Disability Indexが有意に改善。

さらに、首を左右へ回す可動域にも改善がみられました。

一方で、圧痛閾値、恐怖回避思考、痛みに対する自己効力感などでは、群間差がありませんでした。

つまりどういうことか?

これ、個人的にはかなり重要だと思っています。

「オステオパシーか、運動か」ではないんですね。

運動療法という、すでに広く用いられている方法に、オステオパシーを組み合わせる。

その方が、短期的には痛みや機能が改善した。

つまり、オステオパシーは、何でも単独で解決する「魔法の技術」として考えるより、

身体を動かしやすい状態にするための一つの選択肢として考える方が、現実的なのかもしれません。


ところが、この研究には続きがあります

ここからが、かなり面白いです。

先ほどの90名を対象とした研究には、3か月後、6か月後まで追跡した研究があります。

結果は、両方のグループで、痛みと機能は改善していました。

ところが、OMT+運動群と、運動だけの群との間には、3か月後・6か月後とも有意差がありませんでした。

つまりどういうことか?

短期では、OMTを追加した方が良かった。

でも、長期になると、その差は確認できなかった。

これです。

なので、先ほどの研究だけを紹介して、「ほら!オステオパシーは運動より優れています!」で終わらせると、フェアではありません。

長くみれば、運動を続けること自体が、かなり大切なのかもしれない。

あるいは、オステオパシーには、より短期的な役割があるのかもしれない。

そこは、今後さらに研究が必要です。


じゃあ結局、オステオパシーは首こりに効くの?

さて。

ここまで読むと、「で、結局どっちなん?」となりますよね(笑)。

現在の研究を、かなり乱暴にまとめると、こんな感じです。

オステオパシーによって、慢性頸部痛の痛みや機能障害が改善したRCTは複数ある。

一方で、質の高い研究をまとめた2024年のメタ解析では、偽治療やプラセボに対する明確な優越性は確認されていない。

そして、運動と組み合わせた場合、短期的には上乗せ効果がみられた研究があるものの、3〜6か月では差が確認されなかった。

これが、今のところ一番フェアな答えだと思います。


論文の限界

以前、めまいの記事を書いたときにも同じことを書きました。

研究があるから、何でも証明されたわけではありません。

今回も、まだまだ限界があります。

  • オステオパシーだけを扱った首痛研究はそれほど多くない
  • 研究ごとに施術方法が違う
  • 「首こり」と「慢性頸部痛」は完全に同じではない
  • sham治療を設定するのが難しい
  • 小規模な研究も多い
  • 短期効果と長期効果が一致していない
  • どんなタイプの人が特に反応しやすいのか、まだ十分わかっていない

そして、オステオパシーって、そもそも研究するのが少し難しいところがあります。

なぜなら、実際の臨床では、「首が痛いから全員この手技」とはしないからです。

人によって、確認する場所も、施術する場所も、使う技術も違います。

これを研究では、ある程度条件を揃えなければなりません。

このあたりも、研究と実際の臨床との間に、少しギャップがあります。

つまりどういうことか?

研究はある。

良い結果もある。

でも、「完全に証明された」ではない。

今はこの距離感が、一番誠実だと思っています。


神戸元町整骨院KUの臨床的考察

さて、ここからは、論文そのものではなく、研究を踏まえた、当院の臨床的な考え方です。

ここは、エビデンスとして証明された話と、私の臨床上の見方を分けて読んでください。


私は首こりだからといって、首だけを見ません

首が痛い。

首が凝る。

首を動かしにくい。

もちろん、首そのものは確認します。

でも、それだけではありません。

たとえば、肩甲骨。

鎖骨。

腕。

胸郭。

背骨。

骨盤。

身体全体の動き。

その人が普段、どんな姿勢で、どんな仕事をして、どんなふうに身体を使っているのか。

そういうところも確認します。

なぜか?

首が悪いから硬くなっているとは限らないからです。

以前の記事でも書きましたが、首は、ほかの場所を助けるために、頑張っていることがあります。


「痛い場所」と「施術する場所」が同じとは限らない

これが、オステオパシーの面白いところでもあります。

たとえば、首がつらい人でも、腕を前に上げてもらう。

肩甲骨の動きを見る。

身体を捻ってもらう。

呼吸してもらう。

すると、首以外のところを変えたときに、首の動きが変わることがあります。

もちろん、だからといって、「肩甲骨が首こりの原因です」、「肋骨が原因です」と決めるわけではありません。

身体は、そんな簡単に悪いところはわかりません。

ただ、首だけを見ていたときには見えなかった情報が出てくる。

そこを大切にしています。


論文は「平均」を教えてくれる

研究論文というのは、すごく大切です。

私自身、臨床家だからこそ、読んだ方がいいと思っています。

なぜなら、自分の経験だけで施術していると、どうしても、「自分がうまくいった患者さん」の印象が強くなるからです。

研究を見ることで、少し離れたところから、自分のやっていることを見ることができます。

でも、論文にもできないことがあります。

論文が教えてくれるのは、基本的に、「この条件の患者さんたちを平均するとどうだったか」です。

目の前にいる一人の人が、なぜ今日、右の首だけつらいのか。

なぜ仕事をすると戻るのか。

なぜ腕を上げると首が軽くなるのか。

そこまでは、論文だけではわかりません。

だから、私は、Evidence(研究)だけでもなく、Experience(臨床経験)だけでもなく、その両方を大切にしたいと思っています。

そしてもう一つ。

一番大事なのは、目の前にいるその人の身体です。


「オステオパシーなら治る」と言いたいわけではありません

ここも、誤解してほしくないところです。

今回紹介した研究をもって、「首こりならオステオパシーを受ければ治る」と言うつもりはありません。

慢性的な首の痛みには、運動、睡眠、仕事環境、ストレス、生活習慣など、いろいろな要素が関係します。

そして、強い痛みや、進行するしびれ・筋力低下、歩行障害、発熱、外傷後の痛み、いつもと違う激しい頭痛などがある場合は、まず医療機関で確認することが大切です。

そのうえで、大きな疾患が否定され、慢性的な首こりを繰り返している。

そんな場合に、オステオパシーも、身体を考える一つの選択肢として検討できる。

私は、現在の研究からは、そのくらいの位置づけが妥当だと考えています。


最後に

「オステオパシーって、本当に効果あるんですか?」

最初の質問に戻ります。

研究を読んで、私が答えるなら、こうです。

「可能性を示した研究はあります。でも、まだ何でも言い切れるほど研究は揃っていません。」

ちょっと、歯切れ悪いですかね(笑)。

でも、これが今のところ、一番正直な答えだと思います。

効いた研究だけを出して、「科学的に証明されています!」と言うのは簡単です。

でも、効果が確認できなかった研究もある。

長期では差がなくなった研究もある。

そこまで含めて見る。

そのうえで、研究でわかっていることと、目の前の患者さんの身体をどうつなげるか。

そこが、臨床家の仕事なんじゃないかなと思っています。

論文は、答えそのものではありません。

でも、自分の経験だけで暴走しないための、かなり大切な道しるべです。

その道しるべを見ながら、目の前の身体に、「なんで、この首はずっと頑張ってるんやろ?」と問いかける。

私は、そんなふうにオステオパシーを使っています。


神戸元町で繰り返す首こりにお悩みの方へ

神戸元町整骨院KUでは、首こりだからといって、首だけを強く揉んだり、「ここが原因です」と最初から決めつけたりはしません。

首の動き、肩甲骨、鎖骨、腕の使い方、胸郭、姿勢など、必要に応じて身体全体を確認します。

「揉んでもすぐ戻る」

「長年ずっと首が硬い」

「病院では大きな異常はないと言われた」

そんな首こりでお悩みの方は、当院の首こりについての詳しいページもご覧ください。

また、首を揉んでもすぐ戻る方には、「首こりは肩甲骨が原因?首を揉んでもすぐ戻る理由」

呼吸のしづらさも気になる方には、「首こりで息苦しく感じるのはなぜ?首・肋骨・呼吸の関係」でも、それぞれ違った視点から解説しています。

※本記事はオステオパシーによる施術効果を保証するものではありません。症状によっては医療機関での診察・検査が優先されます。


参考文献

  1. Ceballos-Laita L, et al. Is Osteopathic Manipulative Treatment Clinically Superior to Sham or Placebo for Patients with Neck or Low-Back Pain? A Systematic Review with Meta-Analysis. Diseases. 2024;12(11):287. PMID: 39589961.
  2. Cholewicki J, et al. The effects of osteopathic manipulative treatment on pain and disability in patients with chronic neck pain: A single-blinded randomized controlled trial. PM R. 2022;14(12):1417-1429. PMID: 34719122.
  3. Schwerla F, et al. Osteopathic treatment of patients with chronic non-specific neck pain: a randomised controlled trial of efficacy. Forsch Komplementmed. 2008;15(3):138-145. PMID: 18617745.
  4. Groisman S, et al. Osteopathic manipulative treatment combined with exercise improves pain and disability in individuals with non-specific chronic neck pain: A pragmatic randomized controlled trial. J Bodyw Mov Ther. 2020;24(2):189-195. PMID: 32507144.
  5. Groisman S, et al. Assessment of Long-term Effects of Adding Osteopathic Manipulative Treatment to Neck Exercises for Individuals With Non-specific Chronic Neck Pain: A Randomized Trial. J Chiropr Med. 2023;22(4):265-274. PMID: 38205221.
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